【書評】『困ってるひと』 大野更紗
困ってるひと
(2011/06/16)
大野 更紗
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読んでいて涙が止まりませんでした。悲しいから、というのではなく、人間の尊さに突き動かされる思いです。(40代・男性)
壮絶、絶句、涙。潔さ、優しさ、切なさ、面白さ。理不尽・・・・・・。人としての強さ美しさ。凄いパワー。 (30代・女性)
心の温度、上がります。 (20代・女性)
僕は一つ世界を知ったという経験を実感しています。 (10代・男性)
本書の帯には上記のような感動の言葉があふれている。
「全米が泣いた!」「おすぎが感動した!!」こそないものの、何だか最近のハリウッド映画のCMみたいである。どうせ安っぽいお涙頂戴ものだろと斜に構えたくなってしまうが、読み始めれば直ぐにそんな気持ちは吹き飛ぶ。
なんせ本書は、世にもストレンジな病気に罹ったエクストリームな難病女子が、人生の大変さとアメイジングさについて綴った、エクセーレントな一冊なのだ。
著者は本人が「ムーミン谷」と形容するような福島のド田舎から、おフランスに憧れて上智大学入学のために上京し、ビルマ難民の研究に夢中になる。何事にも体当たりで挑戦し、自力で道を切り拓くことで研究者としての道を順調に歩き始めたかに見えた著者を突如原因不明の病が襲う。皮膚がただれ、触れられるだけで激しい痛みが襲う。38℃を超える発熱が続き、全身の関節が動かなくなる。ご飯を食べれば下痢になり、髪の毛が抜け落ちる。
病気の原因を探り、難病患者を取り巻く理不尽な制度と闘い、やっと見つけたオアシスのような病院を退院するまで目が離せなかった。寝る前に読み始めると、読み終わるまで眠れなくなるので気をつけよう。
このような本を読み、他人の人生に触れることにはどのような意味があるだろうか。著者も言うように実際に自分が「困ってる人」にならなければ、本当の意味で「困ってる人」の気持ちは分からないだろう。しかし、自分の抱える悩みの小ささに気がつくかも知れないし、勇気の少なさを知り謙虚になれるかもしれない。「困ってる人」の視点から考えようとする想像力が少しは身につくかもしれない。
昨今、巷で大流行している「絶望」というのは、身体的苦痛のみがもたらすものでは、決してない。本書は誰にとっても読むに値する。
(中略)
生きるとは、けっこう苦しいが、まことに奇っ怪で、書くには値するかも、しれない。
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