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    金正日は戦略家? 【書評】ゲーム理論で不幸な未来が変わる! ブルース・ブエノ・デ・メスキータ

    採点:★★☆☆☆
    ゲーム理論の考え方の基礎、使い道に興味がある人にはおススメ。

    ゲーム理論的なものの考え方の重要性、その考え方にもとづくシミュレーションに関して書かれているが、その肝心なモデルの中身やその組み立て方に関する記述が殆どない。説明されても理解できないんだろうけど、割とボリュームのある本なんだから、その辺にももっと言及して欲しいなぁ・・・

    ゲーム理論で不幸な未来が変わる!―21世紀のノストラダムスがついに明かした破綻脱出プログラムゲーム理論で不幸な未来が変わる!―21世紀のノストラダムスがついに明かした破綻脱出プログラム
    (2010/05)
    ブルース・ブエノ・デ メスキータ

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    ■あらすじ
    応用ゲーム理論の研究者である著者が過去に行った『未来予測』の方法(の概要)とその結果について説明しながら、ゲーム理論の有用性、更にはそれを応用して、「第一次世界大戦は回避できたか?」というような問いに答えて行く。
    イスラエルとパレスチナの紛争を解決するためには、「観光税を人口比に応じて分配する」仕組みの導入が有効らしい。

    ■感想
    コンゴでの圧制で知られるベルギーのレオポルド二世が本国では何故、善政を行ったのか。その行為を彼の「人種差別」という狂気に押し込めてしまうことは簡単だが、著者は彼の行動は至極合理的であり、予想可能であると説く。本国では、「善政」を行うインセンティブがあり、植民地である「コンゴ」にはそのようにさせるインセンティブがなかったのだ。
    サダム・フセインは死んでしまったが、金正日は未だに健在であり、大国を振り回し続けている。独裁者の目的が自身の政権の長期化にあるのなら、彼は相当の戦略家だろう。

    ゲーム理論については、映画化もされたビューティフル・マインドの主人公であるナッシュの名前で知られる、「ナッシュ均衡」や「囚人のジレンマ」が有名だろう。ゲーム理論を実際に応用するために最も肝になるのは、それぞれの行動の得点化、つまり、ある人間がどの程度どのような結果を望むか、にある。著者はそのために、モデル構築の前に各分野の専門家に話を聞く。本書の第5章「正しい問いが問題解決を導く」の中でも著者は、
    「中東に平和をもたらすにはどうすればいいのか?」といった問いに答えよ、と言われたら、わたしの場合はまず、その問いを具体的に分割し、それぞれの小問題を解決するにはどういう選択が必要かを考える。大問題の解決の鍵はそこにあるのだから。
    と書いているが、これはその通りだ。コンサルティングの仕事をしていてもよく痛感する。クライアントが当初課題であると考えている課題は、実は他の課題の原因に過ぎないことが多い。だからこそ、その課題設定の方法をもう少し掘り下げて欲しかった。ここでの前提が狂っていれば、どのようなモデルも価値はないだろう。LTCMやサブプライムローンが破綻したように。

    本書には著者が構築したモデルの詳細は出てこない。複雑すぎて説明されても理解できないのかもしれないが、これでは、ただ著者の言っている「魔法のような」手法を鵜呑みにするしかない。しかし、前からゲーム理論、行動経済学には非常に興味があるので、ちょっと勉強してみよう。初学者用におススメのゲーム理論本があったら、是非教えてください。
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    mrkmhiroshi

    Author:mrkmhiroshi
    広島(高校まで)京都(大学・大学院)東京(会社員)
    現在は噂の西麻布に住んでます
    成毛眞代表のHONZに参加してます http://honz.jp/
    職業:マーケティングコンサルタント
    趣味:読書、トレーニング、映画

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