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    嫌われ者の誕生 【書評】『警察の誕生』 菊池良生

    「本のキュレーター勉強会」1月課題図書
    警察というシステムの誕生と改善に興味のある人はもちろん、ヨーロッパ市民の生活に興味のある人にもおススメ

    警察の誕生 (集英社新書)警察の誕生 (集英社新書)
    (2010/12/17)
    菊池 良生

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    イザヤ・ベンダサンは『日本人とユダヤ人』で「日本人は水と安全はタダだと思っている」と表現しているが、日本人がどう思おうが安全はタダでは維持できない。利益をあげることが目的ではない警察というシステムをどのように維持するかという問題は、その誕生のときから為政者を悩ませ続けていたようだ。例えば、16世紀前後のウィーンでは警察への給料支給が滞り、警察官がせっせと副業に励み始めてしまった。靴屋やパン屋をやっているうちはまだよかったが、禁止されている酒の小売を取り締まる本人たちが率先して行うのだから手に負えない。

    そもそも警察という組織は一般住民の治安を守るために組織されたものではなく、政府に対する犯罪の予防と鎮圧がその第一機能であったようだ。治安維持の名の下に過剰に市民生活に入り込んできたと思えば、お金がないといって権力を傘に非合法ビジネスに手を染める。これでは好きになれという方が無理というものであり、著者は「嫌われ者は警察の宿命」といっている。

    そんな嫌われ者がどのように生まれたのか、その誕生の理由を知るためには当時の人々の生活を理解しなければならない。本書では古代ローマ、中世ヨーロッパ、そして江戸庶民の生活を描きながら、どのような制約の下、どのような機能を目的として警察が組織されたかについて、様々な本を引用しながらまとめられている。引用されているものは未邦訳のものが多いが、日本語の面白そうな本も数多く紹介されており、参考文献リストとしても活用できるだろう。

    当時の生活は現代の我々のものとは大きく異なる。例えば、ヨーロッパの集落は広大な森の海にぽつぽつと存在する程度だった。そのため、他の集落への移動は、獰猛な肉食獣が闊歩し、恐ろしい人間が潜んでいる森を通過しなければならないという、ドラゴンクエストを髣髴とさせる状況だったのだ。集落に入れば安全かと言えばそんなことはなく、そもそも城壁に囲まれた都市に入ることが許されるのは特権階級である「市民」だけだ。自分が市民だからといって安心するのはまだ早い。大きな掛け声が聞こえたと思えば、頭上から糞尿が襲いかかってくる。男女二人が歩くとき、男が道路側、女が建物側という習慣はこの糞尿から女性を守るために生まれた、という説もあるらしい。本書には他にも古代~中世ヨーロッパトリビアがふんだんに盛り込まれており、その部分も大いに楽しめる。

    警察に対する報酬体系をどのように設計するかという問題への取り組みは試行錯誤の繰り返しだ。例えば、薄給の警察のモチベーション向上を目指して、逮捕者毎に報酬を与えると、当然無用な逮捕が氾濫する。そのような困難な状況の中、フランスがどのようにして国家型警察を構築したのか、イギリスのフィールディング兄弟がどのような改革をイギリスにもたらしたのか、本書で是非確認して欲しい。

    中世ヨーロッパについては恥ずかしい程何も知らなかったのだが、本書で興味を持ち、同著者の『ハプスブルクをつくった男』を読んでみたが、ヨーロッパ版大河ドラマといった感じで面白かった。こちらもおススメ

    ハプスブルクをつくった男 (講談社現代新書)ハプスブルクをつくった男 (講談社現代新書)
    (2004/08/10)
    菊池 良生

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    mrkmhiroshi

    Author:mrkmhiroshi
    広島(高校まで)京都(大学・大学院)東京(会社員)
    現在は噂の西麻布に住んでます
    成毛眞代表のHONZに参加してます http://honz.jp/
    職業:マーケティングコンサルタント
    趣味:読書、トレーニング、映画

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